そもそも「コスト削減にならない」とはどういう状態?
最初に、言葉の意味をそろえておきます。この記事でいう「コスト削減にならない」は、次のような状態を指します。
- 削減の施策をしたのに、月々の請求額がほとんど変わらない
- 一度は下がったが、数か月で元に戻ってしまった
- クラウド代は下がったが、そのぶん運用の手間(人件費)が増えた
- 利用量は変わっていないのに、円建ての請求額が上がっている
どれも「何かを頑張ったのに成果が見えない」状態です。ただ、原因はそれぞれ違います。まず原因を切り分けることが大切です。
理由1:何にいくらかかっているかが見えていない
いちばん多いと言われるのがこれです。請求書の合計金額は分かっても、「どのサービスの、どのプロジェクトの、誰の費用か」が分からないと、どこを削ればよいか判断できません。
AWSでもGoogle Cloudでも、リソースにタグ(Google Cloudではラベル)を付けて費用を分類する仕組みがあります。ただし、付け忘れがあると「分類できない費用」として残ってしまいます。削減の第一歩は、実は「削る」ことではなく「見える化」です。
Google Cloudの請求レポートでの絞り込み方は、Google Cloudの請求レポートに新フィルター追加、AI利用料を可視化する方法でも紹介しています。
理由2:一度きりの「大掃除」で終わっている
使っていないサーバーやストレージを一斉に削除すると、その月は確かに下がります。でも、新しい開発や検証が始まれば、また同じように不要なリソースが増えていきます。
つまり、コスト削減は「片付け」ではなく「片付いた状態を保つ仕組み」づくりです。予算アラートの設定や、定期的な棚卸しの担当者を決めておくことが、地味ですが効きます。
理由3:割引プランの買い方が合っていない
AWSのSavings Plansやリザーブドインスタンス、Google Cloudの確約利用割引(CUD)は、一定期間の利用を約束する代わりに単価が下がる仕組みです。正しく使えば大きな効果がありますが、次のような場合は逆効果になることがあります。
- 実際の利用量より多めに約束してしまい、使わない分も支払っている
- 構成を変えたら、約束した対象と実際に使うサービスがずれてしまった
- 逆に慎重になりすぎて、ずっと割引なしの単価で使い続けている
割引プランは「買って終わり」ではありません。利用状況と照らし合わせて定期的に見直すものだと覚えておくと安心です。
理由4:クラウド代は下がったが、手間が増えた
夜間にサーバーを止める、より安いインスタンスに細かく切り替える、といった施策は、請求額を下げる効果があります。一方で、それを人が手作業で回していると、担当者の時間がどんどん取られます。
社内の人件費まで含めて考えると、「削減になっていない」ケースもあり得ます。施策を選ぶときは、自動化できるか、続けられるかも一緒に考えることをおすすめします。
理由5:為替の影響で円建ての金額が上がっている
AWSやGoogle Cloudの料金は、基本的に米ドルで設定されています。そのため、利用量がまったく同じでも、円安が進むと円建ての請求額は上がります。
社内で「先月より高い」と言われたとき、それが利用の増加なのか、為替によるものなのかを分けて見ないと、間違った施策を打ってしまうかもしれません。詳しくは円安でクラウドコストはどう変わる?で整理しています。
理由6:「使い方」だけを見て「買い方」を見ていない
ここまでの理由1〜4は、主に「使い方」の工夫です。もちろん大切ですが、同じ使い方でも、どこから・どう支払うかで、最終的に払う金額が変わることがあります。
日本では、AWSやGoogle Cloudを「請求代行」と呼ばれる仕組み経由で利用する企業も多くあります。請求代行を使うと、たとえば次のような点が変わります。
- 利用料に対して割引が適用される場合がある
- 円建ての請求書払いにできる
- 経理の処理がシンプルになる
使い方の見直しと買い方の見直しは、どちらか一方ではなく組み合わせられます。請求代行の仕組みはAWS請求代行とは?で、基本から説明しています。
見直すおすすめの順番
迷ったときは、次の順番で進めるのが分かりやすいと思います。
- 見える化:タグ・ラベルを整えて、費用の内訳を分かるようにする
- 不要なものの整理:使っていないリソースを止める・削除する
- 続く仕組みづくり:予算アラートと定期的な棚卸しの担当を決める
- 割引プランの検討:安定して使っている部分にだけ、無理のない範囲で適用する
- 買い方の見直し:請求代行などで、同じ利用量でも支払額を下げられないか確認する
具体的な削減手法は、AWSのコスト削減方法15選とGCPコスト削減ガイドにまとめています。
注意しておきたいこと
正直にお伝えすると、どの施策にも向き・不向きがあります。たとえば請求代行の割引率は、利用規模や契約条件によって変わります。また、切り替えには手続きの時間もかかります。割引プランも、利用量が大きく変わる予定がある時期には慎重に判断した方がよいです。「これだけやれば必ず下がる」という方法はありません。自社の状況に合わせて組み合わせることが大切です。
まとめ
クラウドのコスト削減が「ならない」理由は、見えていない、続いていない、割引の買い方が合っていない、手間が増えた、為替、そして買い方を見ていない、の6つに分けて考えると整理しやすくなります。いきなり削るのではなく、まずは見える化から。そのうえで、使い方と買い方の両方を見直していくのが近道です。私もまだ勉強中ですが、同じところで迷っている方の参考になればうれしいです。
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- 併用可否の確認:FAQ の「割引プランと請求代行の併用可否」は、一般論として回答を保留しています(assumed)。自社の実際の条件をご確認のうえ、必要に応じて書き換えてください。
よくある質問(FAQ)
クラウドに移行するとコストは必ず下がりますか?
必ず下がるとは限りません。クラウドは使った分だけ支払う仕組みです。そのため、使い方や管理の仕方によっては、オンプレミスより高くなることもあります。見える化と定期的な見直しが前提になります。
小さな会社でもコスト削減の見直しは必要ですか?
利用額が小さくても、内訳が分からないまま放置すると、少しずつ費用が増えていくことがあります。まずは請求レポートで、どのサービスにいくらかかっているかを確認するところから始めるのがおすすめです。
割引プランと請求代行は併用できますか?
併用できるかどうかは、利用している請求代行サービスの条件によって異なります。検討する際は、事前に提供会社に確認してください。
利用量が変わっていないのに請求額が上がったのはなぜですか?
AWSやGoogle Cloudの料金は米ドル建てなので、為替レートの変動が原因の可能性があります。ドル建ての金額と円建ての金額を分けて比較すると、原因を切り分けやすくなります。