AWSコスト削減の全体像|3つの層で考える

AWSのコスト削減と一口に言っても、アプローチは多岐にわたります。やみくもに手をつける前に、施策を3つの層に分けて整理すると、優先順位が見えてきます。

第1層:ムダの削減 不要リソース停止・Rightsizing・自動停止 第2層:割引の活用 RI・Savings Plans・スポットインスタンス 第3層:請求の最適化 請求代行でリソースを変えずに割引
図:AWSコスト削減の3層モデル。下の層ほど「リソースを変えずに効く」アプローチ。

第1層:ムダの削減。 使っていないリソースの停止や、過剰なスペックの見直しです。設定変更だけで済むものが多く、リスクが低くすぐ着手できます。

第2層:割引の活用。 リザーブドインスタンス、Savings Plans、スポットインスタンスなど、AWSが用意した割引制度を活用します。一定の利用が見込める場合に大きな効果があります。

第3層:請求の最適化。 請求代行サービスなどを通じて、利用するリソースを一切変えずに請求額そのものを下げるアプローチです。

これら3層は排他的ではなく、組み合わせることで効果が最大化します。それでは、各層の具体的な方法を見ていきましょう。

【現状把握】まず使うべき2つの無料ツール

コスト削減の第一歩は「現状を正確に把握すること」です。何にいくらかかっているのかが分からなければ、効果的な対策は打てません。AWSには無料で使える強力な可視化ツールが用意されています。

Cost Explorer でコストを可視化する

AWS Cost Explorerは、過去のコストと使用状況をグラフで可視化できる無料ツールです。サービス別、リージョン別、タグ別などさまざまな切り口で支出を分析でき、将来のコスト予測も確認できます。

まずは「どのサービスが請求額の大半を占めているか」を把握しましょう。一般的には、EC2(仮想サーバー)とデータ転送料、RDS(データベース)が上位を占めるケースが多く見られます。費用の大きい項目から優先的に対策することで、効率よく削減効果を得られます。

AWS Cost Explorerの「コストと使用状況レポート」画面。合計コスト・1か月あたりの平均コスト・サービスカウントが表示されている。
図:AWS Cost Explorerの「コストと使用状況レポート」画面。サービス別にコストを分析できる。

AWS Trusted Advisor で改善点を洗い出す

Trusted Advisorは、コスト最適化・セキュリティ・パフォーマンスなどの観点からAWS環境を自動チェックし、改善提案をしてくれるツールです。

コスト最適化のカテゴリでは、「使用率の低いEC2インスタンス」「アイドル状態のロードバランサー」「関連付けられていないElastic IPアドレス」などが検出されます。なお、コスト最適化を含むすべてのチェック項目を利用するにはビジネスサポートプラン以上の契約が必要です(基本的なチェックは無料プランでも一部利用できます)。

AWS Trusted Advisorのレコメンデーション画面。チェックの概要と、サポートプランのアップグレード案内が表示されている。
図:AWS Trusted Advisorのレコメンデーション画面。すべてのコスト最適化チェックを利用するにはサポートプランのアップグレードが必要。

【ムダの削減】今すぐできる5つの方法

現状を把握したら、まずはリスクの低い「ムダの削減」から着手します。設定変更が中心で、すぐに効果が出るものばかりです。

方法1:不要なリソースを停止・削除する

意外と見落とされがちなのが、使われていないリソースの放置です。具体的には次のようなものが該当します。

これらは「動いていないのに課金されている」典型例です。Cost ExplorerやTrusted Advisorで洗い出し、不要と確認できたものから削除しましょう。

方法2:Rightsizing(適切なサイズへの変更)

Rightsizing(ライトサイジング)とは、ワークロードに対して過剰なスペックのインスタンスを、適切なサイズに変更することです。

たとえばCPU使用率が常時10%程度しかないインスタンスは、ひとつ下のサイズに変更しても問題なく動作する可能性が高く、その場合コストはおよそ半分になります。Cost ExplorerのRightsizingレコメンデーション機能が、変更候補のインスタンスを提案してくれます。

方法3:EBSの未使用ボリューム・古いスナップショットの整理

EBS(ブロックストレージ)は、インスタンスを削除してもボリュームやスナップショットが残り続けることがあります。特にスナップショットは世代管理を怠ると蓄積し、地味にコストを押し上げます。

不要な世代のスナップショットを削除する、保持ポリシーを設定して自動的に古いものを消す、といった運用を取り入れましょう。

方法4:開発・検証環境の自動停止

開発環境や検証環境は、業務時間外(夜間・休日)には使われないことがほとんどです。にもかかわらず24時間起動したままだと、稼働時間の6〜7割がムダになっている計算です。

AWS Instance SchedulerやLambda + EventBridgeを使えば、「平日9時に起動、19時に停止」といったスケジュールを自動化できます。これだけで開発環境のEC2コストを半分以下に抑えられるケースもあります。

方法5:S3のライフサイクル管理

S3に保存したデータは、時間が経つほどアクセス頻度が下がるのが一般的です。ライフサイクルルールを設定し、一定期間アクセスのないデータを自動的に低コストなストレージクラスへ移行させましょう(ストレージクラスの詳細は方法12で解説します)。

【割引の活用】契約形態を見直す4つの方法

一定量の利用が継続的に見込めるなら、AWSの割引制度を活用しない手はありません。ここが削減効果の大きいポイントです。

方法6:リザーブドインスタンス(RI)

リザーブドインスタンス(Reserved Instances)は、1年または3年の利用を事前にコミットすることで、オンデマンド料金より割安にEC2やRDSを使える仕組みです。

支払い方法は「全額前払い」「一部前払い」「前払いなし」の3種類があり、前払いの比率が高いほど割引率も大きくなる傾向があります。長期間安定して稼働するサーバーに向いています。

方法7:Savings Plans

Savings Plansは、「1時間あたり◯ドル使う」という金額ベースのコミットメントをすることで割引を受けられる制度です。RIよりも柔軟で、インスタンスタイプやリージョンの変更にも対応しやすいのが特長です。

Savings Plansには主に2種類あります。

将来的に構成変更の可能性があるなら、柔軟なCompute Savings Plansが扱いやすいでしょう。

方法8:スポットインスタンス

スポットインスタンスは、AWSの余剰キャパシティを大幅な割引価格で利用できる仕組みです。オンデマンド比で大きく割引されることもありますが、AWS側の都合でインスタンスが中断(回収)される可能性があるという制約があります。

そのため、中断されても再実行できるバッチ処理、CI/CD、データ分析、レンダリングなどの用途に適しています。本番のWebサーバーなど、中断が許されないワークロードには不向きです。

方法9:Compute SavingsとRIの使い分け

RIとSavings Plansは併用できますが、どちらをどう使うかは利用状況によります。目安としては次のとおりです。

ベースとなる安定稼働分をSavings PlansやRIでカバーし、変動分をオンデマンドやスポットで補う、という組み合わせが定石です。

【転送・配信の最適化】3つの方法

見落とされがちですが、データ転送料はAWS請求額の大きな部分を占めることがあります。ここの最適化は効果が大きい一方、構成の理解が必要な領域です。

方法10:データ転送料(Data Transfer)の削減

AWSでは、インターネットへのアウトバウンド通信(データの送出)に料金がかかります。一方、インターネットからAWSへのインバウンド通信は基本的に無料です。

データ転送料を抑えるポイントは次のとおりです。

方法11:CloudFront(CDN)の活用

CloudFrontはAWSのCDN(コンテンツ配信ネットワーク)サービスです。画像・動画・静的ファイルなどをエッジロケーションにキャッシュすることで、S3やEC2といったオリジンからの直接転送を減らせます。

CloudFront経由の転送はS3からの直接転送より単価が抑えられるケースがあり、特に配信量が多いサイトでは転送コストの削減につながります。レスポンス速度の向上というメリットも得られます。

方法12:S3ストレージクラスの最適化

S3には用途に応じた複数のストレージクラスがあり、アクセス頻度が低いデータほど安価なクラスに移行できます。

アクセスパターンが読みにくい場合は、S3 Intelligent-Tieringを使えば、アクセス状況に応じてAWSが自動的に最適なクラスへ振り分けてくれます。

【組織・運用の最適化】3つの方法

複数のアカウントやチームでAWSを使っている場合、組織レベルでの最適化が効いてきます。

方法13:AWS Organizationsで請求を統合する

AWS Organizationsを使うと、複数のAWSアカウントの請求を1つに統合(一括請求)できます。統合することで、ボリューム割引やSavings Plans・RIの適用範囲が組織全体に及び、結果的に割引が効きやすくなるメリットがあります。

方法14:タグ付けによるコスト管理

リソースにタグ(例:部署名、プロジェクト名、環境名)を付けておくと、Cost Explorerでタグ別にコストを分析できます。「どのプロジェクトがコストを使っているか」が明確になり、責任の所在がはっきりすることで、現場のコスト意識も高まります。

方法15:請求代行サービスの活用

ここまでの14個は、主に「自社で設定や契約を見直す」アプローチでした。最後に紹介するのは、利用するAWSリソースを一切変えずに請求額を下げる方法です。

それが請求代行(リセール)サービスです。請求代行事業者がAWSとの間に入り、まとめて契約・支払いを行うことで生まれるボリュームメリットを、利用企業に割引として還元する仕組みです。

私たちCloudCost(クラウドコスト合同会社)もこの請求代行サービスを提供しています。特長は次のとおりです。

本記事で紹介したRightsizingやSavings Plansといった社内施策と、請求代行による割引は併用できます。社内努力で削った後の請求額に、さらに割引を上乗せできるイメージです。

なお、AWS Organizations(一括請求)をすでに利用している場合、請求代行プランの適用に制限があることがあります。詳しくは無料相談でご確認ください。

AWS料金削減の手法まとめ比較表

ここまで紹介した主要な手法を、難易度・効果・向いている用途で整理しました。

手法難易度削減効果の目安向いている用途
不要リソースの停止・削除小〜中すべての環境
Rightsizing過剰スペックのインスタンス
開発環境の自動停止低〜中開発・検証環境
リザーブドインスタンス長期安定稼働
Savings Plans継続利用・構成変更あり
スポットインスタンス中〜高特大中断OKの処理
データ転送/CDN最適化中〜高中〜大配信量の多いサービス
S3ストレージ最適化低〜中大量データの保管
請求代行サービス中(最大11%)リソースを変えずに削減したい場合

※削減効果は環境やワークロードによって大きく異なります。上記はあくまで一般的な目安です。

よくある質問(FAQ)

AWSのコスト削減は何から始めればいいですか?

まずはCost ExplorerとTrusted Advisorで現状を把握し、不要リソースの削除とRightsizingといったリスクの低い施策から着手するのがおすすめです。そのうえで、利用が安定しているならSavings PlansやRIを検討します。

リザーブドインスタンスとSavings Plansはどちらが得ですか?

構成が固定的で長期安定して使うならRIやEC2 Instance Savings Plansが割引率で有利な傾向があります。インスタンスタイプやリージョンを変える可能性があるなら、柔軟なCompute Savings Plansが扱いやすいです。両者は併用も可能です。

請求代行サービスを使うと、AWSの管理画面はそのまま使えますか?

はい。CloudCostの請求代行は支払先が変わるだけで、AWSの管理コンソールやリソースの操作はこれまでどおりです。管理者権限をお渡しいただく必要もありません。

社内のコスト最適化と請求代行は併用できますか?

併用できます。Rightsizingや不要リソース削除で請求額そのものを下げ、その金額にさらに請求代行の割引を適用できます。

円安でAWS料金が上がっています。対策はありますか?

ドル建てで請求されるAWS料金は為替の影響を受けます。本記事の社内施策で使用量を抑えることに加え、請求代行による割引を組み合わせることで、為替による負担増を一部相殺できます。

まとめ|コスト削減は「組み合わせ」がカギ

AWSのコスト削減は、ひとつの施策で劇的に下がるものではなく、複数の手法を組み合わせることで効果が積み上がっていきます。本記事の流れを改めて整理すると次のとおりです。

  1. 現状把握:Cost Explorer・Trusted Advisorで「何にいくらかかっているか」を可視化する
  2. ムダの削減:不要リソースの削除、Rightsizing、自動停止などリスクの低い施策から着手
  3. 割引の活用:安定利用分にRIやSavings Plans、中断OKの処理にスポットを適用
  4. 転送・運用の最適化:データ転送・CDN・ストレージ・組織構成を見直す
  5. 請求の最適化:請求代行で、リソースを変えずに請求額そのものを下げる

社内でできる施策をやり切ったうえで、最後のひと押しとして請求代行を組み合わせると、削減効果を最大化できます。