GCPコスト削減の全体像|AWSとの違い
Google Cloud(GCP)のコスト削減も、基本的な考え方はAWSと共通しています。施策を「①ムダの削減」「②割引の活用」「③請求の最適化」の3層に分けると、優先順位が見えてきます。
ただし、GCPにはAWSにない独自の特徴があります。最大のポイントは継続利用割引(Sustained Use Discounts/SUD)です。これは、対象のVMを月のうち一定割合以上使い続けると、特別な契約なしに自動的に割引が適用される仕組みです。AWSのように事前にリザーブドインスタンスを購入しなくても、使っているだけで割引が効くケースがあるのです。
そのうえで、さらに踏み込んだ割引が欲しい場合は、確約利用割引(CUD)を契約します。それでは、各層の具体的な方法を見ていきましょう。
【現状把握】Cloud Billingで支出を可視化する
コスト削減の第一歩は現状把握です。GCPでは「Cloud Billing」の各機能を使って、何にいくらかかっているかを無料で可視化できます。
課金レポートとダッシュボード
Google Cloud Consoleの「お支払い」セクションにある課金レポートでは、プロジェクト別・サービス別・ラベル別など、さまざまな切り口で支出を分析できます。まずは「どのサービスが請求額の大半を占めているか」を確認しましょう。Compute Engine(仮想マシン)、Cloud Storage、BigQuery、ネットワーク(下り通信)などが上位を占めるケースが一般的です。
さらに、予算アラートを設定しておくと、設定金額に近づいた際に通知が届くため、想定外の請求を未然に防げます。
Recommender(推奨事項)の活用
GCPには「Recommender(推奨事項)」という機能があり、過剰なスペックのVMや、アイドル状態のリソースなどを自動で検出して改善提案をしてくれます。コスト最適化の出発点として非常に有用です。Active Assistという仕組みの一部として、コンソール上に推奨事項が表示されます。
【ムダの削減】今すぐできる4つの方法
現状を把握したら、まずはリスクの低い「ムダの削減」から着手します。
方法1:アイドル状態のリソースを停止・削除する
使われていないリソースの放置は、AWS同様GCPでも典型的なムダです。次のようなものが該当します。
- 停止していない検証用のVMインスタンス
- VMから切り離されたまま残っている永続ディスク
- 使われていない静的外部IPアドレス(未使用だと課金対象になります)
- 古いマシンイメージやスナップショット
前述のRecommenderが「アイドルVM」「アイドル永続ディスク」「未使用IP」として検出してくれるので、確認のうえ不要なものを削除しましょう。
方法2:Rightsizing(マシンタイプの最適化)
VMのスペックがワークロードに対して過剰な場合、ひとつ下のマシンタイプに変更することでコストを抑えられます。Recommenderの「マシンタイプの推奨事項」が、各VMの実使用率をもとに最適なサイズを提案してくれます。
方法3:開発・検証環境の自動停止
業務時間外に使われない開発環境を24時間起動しておくのはムダです。Cloud SchedulerとCloud Functionsを組み合わせれば、「平日夜に停止、朝に起動」といったスケジュールを自動化できます。これだけで開発環境のVMコストを大きく削減できます。
方法4:BigQueryのクエリコストを抑える
BigQueryはスキャンしたデータ量に応じて課金されるため(オンデマンド課金の場合)、クエリの書き方ひとつでコストが変わります。SELECT * を避けて必要な列だけを指定する、パーティション分割テーブルを使って読み取り範囲を絞る、といった工夫で無駄なスキャンを減らせます。安定的に大量利用する場合は、定額制のEdition(容量ベース課金)を検討するのも有効です。
【割引の活用】GCP特有の割引制度3つ
GCPには独自の割引制度があります。ここが削減効果の大きいポイントです。
方法5:継続利用割引(SUD)を理解する
継続利用割引(Sustained Use Discounts/SUD)は、対象のCompute Engine VMを月のうち一定割合以上継続して使うと、自動的に割引が適用される仕組みです。事前のコミットや申し込みは不要で、長く使うほど割引率が上がっていきます。
つまり、安定稼働しているVMには、特に何もしなくてもこの割引が効いている可能性があります。まずは課金レポートで、SUDがどの程度適用されているかを確認してみましょう。
方法6:確約利用割引(CUD)でさらに下げる
確約利用割引(Committed Use Discounts/CUD)は、1年または3年の利用を事前にコミットすることで、継続利用割引よりも大きな割引を受けられる制度です。安定した利用が見込めるワークロードに向いています。
CUDには主に2タイプあります。
- リソースベースのCUD:特定のマシンタイプ・リージョンのvCPUとメモリにコミットする
- 支出ベースのCUD(Flexible CUD):金額ベースでコミットし、マシンタイプやリージョンをまたいで柔軟に適用できる
構成変更の可能性があるなら、柔軟な支出ベースのCUDが扱いやすいでしょう。AWSのSavings Plansに近い考え方です。
方法7:Spot VM(プリエンプティブル)を活用する
Spot VMは、Googleの余剰キャパシティを大幅な割引価格で利用できる仕組みです。オンデマンド比で大きく割引される一方、Google側の都合でいつでも停止される可能性があります。
そのため、中断されても再実行できるバッチ処理、データ分析、CI/CD、レンダリングなどに適しています。本番のWebサーバーなど、中断が許されない用途には不向きです。AWSのスポットインスタンスと同じ位置づけと考えてよいでしょう。
【ストレージ・データの最適化】2つの方法
方法8:Cloud Storageのストレージクラス最適化
Cloud Storageには、アクセス頻度に応じた複数のストレージクラスがあります。アクセス頻度が下がったデータは、より安価なクラスへ移行することでコストを抑えられます。
- Standard:頻繁にアクセスするデータ向け
- Nearline:月1回程度のアクセス向け
- Coldline:四半期に1回程度のアクセス向け
- Archive:年1回程度・長期保管向けで最も安価
オブジェクトのライフサイクル管理ルールを設定すれば、「作成から30日経過したらNearlineへ」といった移行を自動化できます。
方法9:下り(外向き)ネットワーク料金の削減
GCPでも、インターネットへの下り通信(egress)には料金がかかります。一方、上り通信(ingress)は基本的に無料です。同一リージョン内で通信を完結させる、Cloud CDNを活用してオリジンからの転送を減らす、といった設計でegress料金を抑えられます。
【組織・運用の最適化】3つの方法
方法10:プロジェクト・フォルダ構成と請求の統合
GCPでは、複数のプロジェクトを組織(Organization)配下のフォルダで整理し、請求先アカウントを統合できます。これにより全社的なコスト管理がしやすくなり、CUDの適用範囲も組織全体に及びやすくなります。
方法11:ラベルによるコスト管理
リソースにラベル(例:部署、プロジェクト、環境)を付けておくと、課金レポートでラベル別にコストを分析できます。「どのチームがコストを使っているか」が明確になり、現場のコスト意識も高まります。
方法12:請求代行サービスの活用
ここまでの11個は、主に「自社で設定や契約を見直す」アプローチでした。最後に紹介するのは、利用するGCPリソースを一切変えずに請求額を下げる方法です。
それが請求代行(リセール)サービスです。請求代行事業者がGoogleとの間に入り、まとめて契約・支払いを行うことで生まれるボリュームメリットを、利用企業に割引として還元する仕組みです。
私たちCloudCost(クラウドコスト合同会社)もこの請求代行サービスを提供しています。特長は次のとおりです。
- 支払先を変更するだけで、最大11%(サービス料込み)の割引が適用される
- 管理者権限・オーナー権限の提供は不要。お客様のGCP環境には一切触れません
- Google Cloudだけでなく、AWS・Alibaba Cloud・Huawei Cloudなど主要クラウドに対応
本記事で紹介したRightsizingやCUDといった社内施策と、請求代行による割引は併用できます。社内努力で削った後の請求額に、さらに割引を上乗せできるイメージです。
GCP料金削減の手法まとめ比較表
ここまで紹介した主要な手法を、難易度・効果・向いている用途で整理しました。
| 手法 | 難易度 | 削減効果の目安 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| アイドルリソースの削除 | 低 | 小〜中 | すべての環境 |
| Rightsizing | 低 | 中 | 過剰スペックのVM |
| 開発環境の自動停止 | 低〜中 | 中 | 開発・検証環境 |
| BigQueryクエリ最適化 | 中 | 中〜大 | データ分析が多い環境 |
| 継続利用割引(SUD) | 低(自動) | 中 | 安定稼働のVM |
| 確約利用割引(CUD) | 中 | 大 | 長期安定・継続利用 |
| Spot VM | 中〜高 | 特大 | 中断OKの処理 |
| ストレージクラス最適化 | 低〜中 | 中 | 大量データの保管 |
| 請求代行サービス | 低 | 中(最大11%) | リソースを変えずに削減したい場合 |
※削減効果は環境やワークロードによって大きく異なります。上記はあくまで一般的な目安です。
よくある質問(FAQ)
GCPのコスト削減は何から始めればいいですか?
まずはCloud Billingのレポートと請求ダッシュボードで現状を可視化し、不要なリソースの削除やRightsizingといったリスクの低い施策から着手するのがおすすめです。そのうえで、利用が安定しているなら確約利用割引(CUD)を検討します。
確約利用割引(CUD)と継続利用割引(SUD)の違いは何ですか?
継続利用割引(SUD)は、対象のVMを一定割合以上の期間使い続けると自動的に適用される割引で、事前のコミットは不要です。確約利用割引(CUD)は、1年または3年の利用を事前に契約することで、より大きな割引を受けられる仕組みです。安定した利用が見込めるならCUDの方が割引率は大きくなる傾向があります。
請求代行サービスを使うと、GCPの管理画面はそのまま使えますか?
はい。CloudCostの請求代行は支払先が変わるだけで、Google Cloud Consoleやリソースの操作はこれまでどおりです。管理者権限をお渡しいただく必要もありません。
社内のコスト最適化と請求代行は併用できますか?
併用できます。Rightsizingや不要リソースの削除で請求額そのものを下げ、その金額にさらに請求代行の割引を適用できます。
円安でGCP料金が上がっています。対策はありますか?
ドル建てで請求されるGCP料金は為替の影響を受けます。本記事の社内施策で使用量を抑えることに加え、請求代行による割引を組み合わせることで、為替による負担増を一部相殺できます。
まとめ|GCP削減は「自動割引+コミット+請求最適化」
GCPのコスト削減は、複数の手法を組み合わせることで効果が積み上がります。本記事の流れを改めて整理すると次のとおりです。
- 現状把握:Cloud BillingとRecommenderで「何にいくらかかっているか」を可視化する
- ムダの削減:アイドルリソースの削除、Rightsizing、自動停止、BigQuery最適化から着手
- 割引の活用:自動適用のSUDを把握し、安定利用分にCUD、中断OKの処理にSpot VMを適用
- ストレージ・運用の最適化:ストレージクラス・egress・組織構成を見直す
- 請求の最適化:請求代行で、リソースを変えずに請求額そのものを下げる
社内でできる施策をやり切ったうえで、最後のひと押しとして請求代行を組み合わせると、削減効果を最大化できます。