さて今回は、段取りつながりで「AWSリセール(請求代行)の契約で何を確認するか」の話です。お問い合わせの中でも、「契約書はどんな構成ですか」「NDAは結べますか」「どこまでが御社の作業ですか」といったご質問はよくいただきます。地味なテーマですが、ここを曖昧にしたまま進めると、解約や障害のときに「それはどちらの担当でしたっけ」となりがちです。

この記事では、確認すべき12項目をチェックリストにして、それぞれがどの書類に書かれていることが多いかとセットで整理します。

※この記事は一般的な確認のポイントをまとめたもので、法的な助言ではありません。契約内容の最終的な判断は、弁護士などの専門家にご確認ください。

リセール契約は「何枚の書類」でできている?

そもそも、リセール契約の書類はどんな構成なのでしょうか。事業者によって呼び方は違いますが、一般的には次のような組み合わせになります。

書類 主に書かれること 見落としやすい点
基本契約(利用規約・サービス約款)契約期間、解約、責任の範囲、支払い条件の原則自動更新と解約通知の期限
個別契約(申込書・注文書)対象のAWSアカウント、割引率、デポジット額、開始日割引の「対象外」の書き方
NDA(秘密保持契約)共有する情報の範囲、目的、期間契約終了後の情報の扱い
作業分担表(サービス仕様書・責任分界表)どちらが何をするか障害時・解約時の作業
AWS側の規約AWSのサービスの使い方のルール事業者との契約とは別に適用される

最後の行がポイントです。AWSの公式ブログでは、AWS Solution Provider Programについて、お客様がAWSとの間に自分の条件を持てる仕組みだと説明されています(AWS公式ブログ:Solution Provider Programの紹介)。つまり、事業者との書類だけ読んでも全体像にはならない、ということですね。

12項目チェックリスト(一覧)

まず全体を一覧にします。印刷して、見積もりの打ち合わせに持っていくくらいの使い方を想定しています。

# 分類 確認項目 書かれていることが多い書類
1お金割引の対象範囲(RI・SP・Marketplace・サポート・税)個別契約
2お金請求の通貨と為替レートの決め方基本契約・個別契約
3お金デポジットの額と返金のタイミング個別契約
4お金支払期日と、遅れたときの扱い(利用停止の条件)基本契約
5アカウントアカウントのつなぎ方(招待・新規作成・ルート権限を預ける)個別契約・作業分担表
6アカウントルートユーザーのメールアドレスと認証情報の管理者作業分担表
7アカウント組織のポリシー(SCPなど)と、離脱の制限作業分担表・サービス仕様書
8アカウント解約時のアカウント返還とコストデータの受け渡し基本契約・作業分担表
9運用と情報サポートの窓口(Partner-Led / Resold)サービス仕様書
10運用と情報作業分担(責任分界)作業分担表
11運用と情報NDAの範囲・期間・終了後の扱いNDA
12運用と情報契約期間・自動更新・解約通知の期限基本契約

ここから、分類ごとに「なぜそこを見るのか」を補足します。

お金の4項目(1〜4)

1. 割引の対象範囲:「最大◯%」の割引が、どの料金に効くのかを確認します。リザーブドインスタンス(RI)やSavings Plans(SP)、AWS Marketplaceの購入、AWSサポートの料金、税金は、事業者によって扱いが分かれやすいところです。くわしくは「AWS請求代行の割引率はどう決まる?」で書きました。

2. 通貨と為替レート:円建てで請求される場合、どの時点のどのレートで換算するのかを確認します。ちなみにAWSと直接契約している日本のアカウントでも、請求書払いなら円かドルを選べます(AWS公式:AWS Japan FAQ)。比較するときは、この点も頭に入れておくとよいです。

3. デポジット:額だけでなく、解約時にいつ・どうやって返金されるか(最終月の請求と相殺するのか、振り込みなのか)まで見ておきます。

4. 支払期日と遅延時の扱い:支払いが遅れたときに、いつからどんな制限がかかるのか。経理のフローと合わせて確認しておくと安心です。

アカウントの4項目(5〜8)

ここが一番、AWSの仕様と契約の両方にまたがるところです。

5. つなぎ方:多くの請求代行は、お客様のアカウントを事業者の組織(AWS Organizations)に招待する形です。招待は15日以内に応答しないと期限切れになり、参加した時点で、組織の管理アカウントがそのアカウントの料金すべてに責任を持つようになります(AWS公式:組織への招待の管理)。今どの組織に入っているかは、CLIなら aws organizations describe-organization で確認できます。

6. ルートユーザー:組織の中で新しく作られたアカウントには、最初はルートユーザーの認証情報がありません。また、管理アカウント側の「ルートアクセスの一元管理」で、メンバーアカウントのルートの認証情報を削除することもできます(AWS公式:組織のメンバーアカウントへのアクセス)。誰がどう管理するのかを、作業分担表に書いてもらうのがおすすめです。

7. 組織のポリシーと離脱の制限:組織に参加すると、ルートやOUに付いたポリシーはすぐに自社のアカウントにも適用されます。さらに、管理アカウントの管理者は、メンバーアカウントから組織を離れる操作(organizations:LeaveOrganization)をできなくすることもできます(AWS公式:メンバーアカウントから組織を離れる)。解約時に事業者がどう対応するかを、契約の段階で確認しておきましょう。

8. 返還とデータ:組織を離れると、組織にいた期間のコストと使用量のデータ(Cost Explorerなど)には自社のアカウントからアクセスできなくなります。データ自体は管理アカウント側に残ります(同上)。解約時に、どの形式で何か月分のデータを受け取れるのかを決めておくと、あとで困りません。

運用と情報の4項目(9〜12)

9. サポートの窓口:AWSの公式ブログでは、Solution Providerのサポートには、事業者が唯一の技術窓口になる「Partner-Led Support」と、お客様がAWSのサポートに直接問い合わせできる「Resold Support」があると説明されています(AWS公式ブログ:組織でのサポートプランの決め方)。どちらなのかで、障害時の動き方が変わります。

10. 作業分担:次の章で例を出します。

11. NDA:請求データやアカウントIDなど、どこまでの情報をやりとりするかを決めます。これも後ろの章で少しくわしく書きます。

12. 契約期間と解約通知:1年契約・自動更新という形が多く、「◯か月前までに通知」というルールが付くことがよくあります。乗り換えを考えたときに一番効いてくるのがここです。

作業分担表の例

自分も最初は「請求代行なんだから、請求書を出すところまでが事業者の仕事でしょ」くらいに思っていたのですが、実際に分担を書き出してみると、意外と境目があいまいな作業が出てきます。下は、組織に招待する形を想定した例です(事業者ごとに内容は違います)。

作業 お客様 事業者 メモ
組織への招待の送信○
招待の承認○15日以内に応答が必要
IAMユーザー・ロールの管理○事業者がアクセス用のロールを求めるかも確認
セキュリティ設定・バックアップ○請求代行のみの契約なら通常はお客様側
請求書の発行○通貨・締め日を確認
コストデータの提供○頻度と形式を確認
RI・SPの購入要確認要確認どのアカウントで買うかで割引の扱いが変わる
障害時の技術的な問い合わせ要確認要確認サポートの形(項目9)しだい
解約時の組織からの離脱○○ルートの復旧・支払い方法の登録が必要な場合あり

「要確認」の行が、まさに打ち合わせで詰めたいところです。とくにRI・SPは、購入したアカウントにひもづくので、誰の名義で買うかを先に決めておかないと、解約のときに割引がどこに残るのかで揉めかねません。

NDAで見るポイント

請求代行では、請求データやアカウントの構成など、それなりに踏み込んだ情報をやりとりします。NDAでは次の4つを見ておくとよいと思います。

見積もりのために請求データを出す段階で、先にNDAを結ぶこともあります。社内の規程で必要な場合は、最初の打ち合わせで「NDAを先に結べますか」と聞いてしまうのが早いですね。

確認を進める順番

最後に、実際に進めるときの順番の例です。

  1. 社内で「何を目的に請求代行を使うか」(割引、円建て、請求書払い)を決める
  2. 必要ならNDAを結ぶ
  3. 直近の請求データを渡して、見積もりと個別契約のたたき台をもらう
  4. 上の12項目をチェックリストで確認し、作業分担表を作ってもらう
  5. 基本契約・個別契約を法務の担当者(または弁護士)に確認してもらう
  6. 招待を承認して切り替え、翌月の請求書で割引と金額を確認する

ちなみにクラウドコストの請求代行では、ルート権限をお預かりする必要はなく、運用支援などのセット契約もありません。デポジットは直近の請求書の1〜2か月分です。

まとめ

AWSリセールの契約は、基本契約・個別契約・NDA・作業分担表、そしてAWS側の規約という複数の書類でできています。お金・アカウント・運用と情報の12項目を、どの書類に書かれているかとセットで確認すると、抜け漏れが減ります。とくに、ルートユーザーの管理と組織からの離脱は、AWSの仕様がからむので早めに確認しておきたいところです。

契約前の注意点は「AWS請求代行のデメリット7つ」、事業者の選び方は「AWS請求代行の選び方」もあわせてどうぞ。次は、実際に他社から乗り換えるときの段取りについても書ければと思います。

よくある質問(FAQ)

AWSリセールの契約書には、どんな書類がありますか?

一般的には、基本契約(利用規約)、個別契約(申込書)、必要に応じてNDAと作業分担表の組み合わせです。これとは別に、AWSのサービスの使い方についてはAWS側の規約も関係します。どの内容がどの書類に書かれているかを確認しましょう。

請求代行の契約前にNDAは結べますか?

事業者によりますが、請求データを渡して見積もりを依頼する前にNDAを結ぶこともあります。社内規程で必要な場合は、最初の打ち合わせで先にNDAを結べるか聞いておくとスムーズです。

作業分担で揉めやすいのはどこですか?

障害時の技術的な問い合わせ、RI・Savings Plansをどのアカウントで買うか、解約時の組織からの離脱の3つが、境目があいまいになりやすいところです。作業分担表に「要確認」の行を作って、契約前に決めておくのがおすすめです。

この12項目を確認すれば法的に問題ありませんか?

この記事は確認のポイントをまとめたもので、法的な助言ではありません。契約内容の最終判断は、弁護士などの専門家に確認してください。