そもそもAWS Organizationsとは?
AWS Organizationsは、複数のAWSアカウントを1つの「組織」としてまとめて管理する仕組みです。組織には2種類のアカウントがあります。
- 管理アカウント:組織を作ったアカウント。組織全体の請求をまとめて支払う
- メンバーアカウント:組織に参加しているアカウント。利用料は管理アカウントに請求される
この「まとめて支払う」機能を一括請求(コンソリデーテッドビリング)と呼びます。AWSの公式ドキュメントでは、組織内の利用量が合算されてボリューム割引が共有されること、リザーブドインスタンス(RI)やSavings Plans(SP)の割引も組織内のアカウント間で共有されることが説明されています(AWS公式:一括請求)。
なぜ請求代行とOrganizationsが関係するのか
多くのAWS請求代行は、請求代行事業者が持つ組織に、お客様のAWSアカウントをメンバーとして参加させる形で動いています。AWSへの支払いは事業者の管理アカウントが行い、事業者がお客様へ円建ての請求書を出す、という流れです。
ここで大事なのが、1つのAWSアカウントは同時に1つの組織にしか所属できないというルールです。つまり、すでに何らかの組織に入っているアカウントは、そのままでは請求代行事業者の組織に参加できません。ここが「Organizationsを使っていると請求代行が使えない/制限がある」と言われる理由です。
パターン別:自社の状況で何が変わる?
パターン1:Organizationsを使っていない(単一アカウント)
いちばんシンプルなケースです。請求代行事業者から組織への招待が届くので、自社のアカウントで承認するだけで参加できます。AWSのリソース(サーバーやデータベース)を作り直す必要はありません。
パターン2:自社でOrganizationsを運用している
複数のアカウントを自社の組織で管理しているケースです。管理アカウントは、自分の組織を削除しない限り、ほかの組織に参加できません。メンバーアカウントも、いったん自社の組織から外れる必要があります。
その結果、自社の組織で設定していたSCP(サービスコントロールポリシー)などのガードレールが外れます。AWS Control Towerなどで統制をかけている場合は影響が大きいので、慎重に検討が必要です。事業者によっては組織ごと預けるプランや、組織管理に対応したプランを用意していることもあるため、まずは自社の構成を伝えて相談するのが早いです。
クラウドコストの請求代行では、自社で組織を運用している場合、アカウントを自社の組織から外したうえでご利用いただく形になります。アカウントが複数あるときは、すべてを一度に切り替える必要はありません。たとえばテスト環境のアカウントから始めて、問題がないことを確かめながら段階的に進めることもできます。
パターン3:別の請求代行事業者の組織に入っている(乗り換え)
意外と多いのがこのケースです。今の代理店の組織にメンバーとして入っているので、まずその組織から離脱し、新しい事業者の組織に参加し直します。離脱にはいくつか条件があり、次の章の注意点がほぼそのまま当てはまります。
切り替え時の注意点5つ
AWSの公式ドキュメント(メンバーアカウントの組織からの削除)をもとに、切り替え時につまずきやすい点を整理しました。
- 過去のコストデータが見えなくなる:組織を離れたアカウントは、組織に所属していた期間のコストと使用量のデータ(Cost Explorerなど)にアクセスできなくなります。データは消えずに旧組織の管理アカウント側に残るため、離脱前にCSVなどで手元に保存しておきましょう。
- 一時的に支払い方法などの登録が必要:組織を離れる瞬間から、そのアカウントは単独のアカウントとして扱われます。そのため、サポートプランの選択・連絡先の確認・有効な支払い方法の登録が済んでいないと離脱できません。
- アカウントに付けたタグが消える:組織側でアカウントに付けていたタグは、離脱時に削除されます。コスト配分に使っていた場合は控えておきましょう。
- SCPなどの組織ポリシーが外れる:離脱すると、組織で設定していた制限が効かなくなります。権限が想定より広がる場合があるので、IAMの設定もあわせて確認します。
- RI・SPの割引がどこに残るかを確認する:RIやSPを購入したアカウントが旧組織の管理アカウントだった場合、その割引は自社のアカウントには付いてきません。購入したのがどのアカウントかを事前に確認しましょう。
ほかにも、組織の中で作られたアカウントは作成から4日以上たたないと外せない、旧組織の管理アカウントからのアクセス用IAMロールは自動では消えない、といった細かいルールがあります。
切り替えの流れ(例)
- 現状を確認する:組織の有無、RI・SPを購入したアカウント、タグやSCPの使い方を洗い出す
- データを退避する:過去のコスト・使用量データを出力して保存する
- 旧組織から離脱する(パターン2・3の場合):単独アカウントとして必要な情報を登録してから離脱する
- 新しい組織の招待を承認する:請求代行事業者からの招待をコンソールで承認する
- 翌月の請求を確認する:請求書の金額と割引が想定どおりかを確認する
なお、クラウドコストの請求代行では、こちらで用意したAWSの組織にご参加いただく形が基本です。こちらから招待を送り、お客様に承認いただく手続きで切り替わります。ルート権限(管理者権限)をお預かりする必要はありません。
まとめ
AWS請求代行は「請求先が変わるだけ」と思われがちですが、実際にはOrganizationsへの参加という形で動くことが多く、自社の組織構成によって準備が変わります。単一アカウントなら招待を承認するだけ、自社で組織を運用中や他社からの乗り換えなら、データの退避と離脱の準備が必要です。
割引率がどう決まるのかは「AWS請求代行の割引率はどう決まる?」で整理しました。請求代行の全体像は「AWS請求代行とは」、事業者ごとのOrganizations対応の違いは「AWS請求代行おすすめ比較」もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
AWS Organizationsを使っていても請求代行は使えますか?
使えるケースはありますが、条件があります。1つのアカウントは同時に1つの組織にしか所属できないため、自社の組織から外れるか、組織ごと対応できるプランを選ぶ必要があります。自社の構成を伝えて、事業者に個別に確認するのが確実です。
請求代行に切り替えるとサーバーやデータを移行する必要はありますか?
いいえ。組織への参加・離脱は請求と管理の単位が変わるだけで、EC2やRDSなどのリソースを作り直す必要はありません。ただし、タグやSCPなど組織にひもづく設定は影響を受けます。
今の代理店から乗り換えるとき、過去の請求データはどうなりますか?
組織を離れると、所属していた期間のコストデータに自社のアカウントからアクセスできなくなります。データ自体は旧組織の管理アカウントに残りますが、手元で見られるように、離脱前に出力して保存しておくことをおすすめします。
自社で購入したRIやSavings Plansはそのまま使えますか?
RIやSPは購入したアカウントにひもづきます。自社のアカウントで購入したものかどうか、また請求代行の割引とどう組み合わさるかは事業者によって扱いが異なるため、契約前に確認してください。